ハイビスカスの幕開け
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新首都東京 第五階層 新朱雀山円香宅 2045年4月25日 大安 アトラと一緒に帰った夕方、私は安堵感で火傷、飛び降りた時の衝撃、疲労が同時に襲い掛かって家に帰るなり倒れこんでしまった。次の起きたのは翌日の朝で、起きたときにはベッドの横でアトラが座って寝ていた。 "怪我の事は上司に伝えておいた、今は半月安静にしなさい。" 私は布団から出て顔を洗いに行く。 「髪の毛気持ち悪い……シャワーも浴びよう……」 軽くシャワーを浴び、服も着替える。 「ウルフ」 呼びかけると、端末が通話状態になる。 <<起きたか>> 欲しいものは既に手に入ったのかな。 「もう用済みになったのかな。自分の娘なのに酷いや」 そういうと通話が切れる。 「おはよう三波、起きたらベッドにいなくてビックリしたわ」 洗面所から出ると、リビングにはアトラがいた。 「あはは、ごめんね」 痛い所突かれた。 「いやー……昔はできたんだけど……お母さんも私も忙しくて……」 椅子に座り、前に出された料理に手を付ける前に手を合わせる。 「いただきます」 食パンにハムエッグ、典型的な朝食だ。でも今は一人で食べていない、目の前にアトラがいる。私はそれだけでも嬉しい。 「第二層でのビル爆破事件は現在ライジングゼロ社が調査しておりますが、第二層の調査は難航しております……」 ニュースは昨日の件で持ちきりだ。私は話を持ち掛ける。 「昨日さ」 その答えがわからないまま、半月の時間を費やすことになる。 新首都東京 第五階層 ライジングゼロ社新東京支部 2045年5月12日 仏滅 「おう、お前ら今日がその日だったか」 謹慎期間が終わった私達は一緒に出社した。 「お前、期間中なにしてたんだ?」 そんな中、黒鎧課長の電話が鳴る。 「もしもし? 何? UFO? うちはオカルト研究所じゃねえんだぞ」 UFO? 「ああ、ああ、わかった」 課長が電話を切ると手を叩き皆の手を止める。 「皆聞け、未確認飛行物体が第七層の空を悠々と飛んでいるという情報が入った。数は不明だが 社員の一人が手を挙げる。 「どうした」 私の端末が通話状態になる。 「えっ、何も触ってないんだけど……」 私は一つ疑問に思った。 「あれ? ビーストモードは制空権が取れている状態に運用するものだよね。トーカティブ、今回はビーストモードにするの?」 戦闘機なんて初めて乗るんだけど、どうしよう。 <<円香は乗らないって言ってまして、ここで乗れそうなのは能力的には三波ちゃんしかいない、なので! 君でも操縦できるように操縦系を簡略化してコントローラーを置かせてもらいました! 詳細な調整はこちらでモニターするので安心して戦ってください!>> 戦闘機はぶっつけ本番だ、やるしかない。そういえば 「私も行きます」 アトラが声を上げる。 「おい、お前は戦闘機乗ったことも訓練も受けてないだろ、どうするつもりだ」 ずっと一緒にいたいって言ったこと、覚えていてくれたんだ。 <<確かに 新首都東京 第五階層 ライジングゼロ社カタパルト施設 2045年5月12日 仏滅 「よし、行こうよアトラ」 私はパイロットスーツに着替えて、ヘルメットを被る。 「 私ははしごを登ってコックピットに入り込む。ここから先は一蓮托生だ。この子とアトラの命運は私にかかっている。操縦桿らしきものがなく、代わりにあったのはコントローラー。 「あ、これならいけるかもしれない」 お母さんから通信が入ってくる。 <<三波、月影、貴方たち二人のチーム名はカキツバタよ>> カタパルトが勢い良く動き、私達を大空へと飛ばす。 「うっ……」 そうだった。私はアトラの命も背負ってるんだった。 <<こちらオーナー。カキツバタ、敵は散開している。ステルスミサイルキャリアの武装を使用するんだ>> レーダーには多数の敵影が見える。肉眼では豆粒にしか見えないのでどういう機体なのか判別はできない。 「了解です」 私は兵装を切り替え、ミサイルキャリアを展開させる。 「 ミサイルを撃つと私の見ている範囲のミサイルは可能な限り予測されない軌道を取らせ、正確に片翼を撃ち抜いていく。 「 ミサイルは羽のように舞い、不明機を墜としていく。 「楽勝……かな」 そう思っていると、突然後ろからミサイルが飛んでくる。レーダーに映らなかったのに、なんで!? 「三波、慌てないで。私もついてるから」 機首を傾け、上からのぞくと黒いステルス戦闘機が私達の後ろについていた。 「今までのは全部囮だったんだ、本命はこの機体!」 後ろをぴったりくっついてきて離れない。相手は手練れだ。 「あの機体レールガンを装備してる!」 私はとにかくミサイルを虚空にばらまき、それを全て自分の管制下に置く。 「 四方八方に散らばったミサイルが、反転し、速度を調整して不明機の未来予測位置の前後上下左右にミサイルを置き速度を調整して一斉に攻撃させる。 「危なかった……」 アトラに言われて上を見上げると、宇宙に手が届きそうなダークブルーの空が広がっていた。そのまま吸い込まれてしまいそうだ。手を伸ばす、それでも届かない蒼穹。 「……! ……! 三波! 帰ろう」 私は飛行機を空港に向けた。 新首都東京 第五階層 ライジングゼロ社新東京支部 2045年5月12日 仏滅 「不明機は全機撃墜、街の被害も最小限。一機除いて犯人は無事逮捕。上出来だな」 初めて褒められた気がする。 「その繊細な動きをもっと仕事に生かしてくれ、以上だ」 えー、面倒くさい。 「お前顔に面倒くさいって書いてあるぞ」 私はアトラに抱き着く。身長差の関係上私の顔が胸に当たってしまう。たくさんの視線を感じるが気にしない。アトラは即座に私を離す。 「じゃれつくな、仕事に戻れ」 「ウルフ、早かったな」 「緑上の右腕パーツだ。バーコードを読み取ったが 「そうか……」 「尤も 「……もしもし、三波? 今日は帰れそうにないから二人で食べてなさい、うん、うん、それじゃあね」 「さて……糸を垂らしてみるか」 |
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2020/05/04 2020/06/05:誤字修正 2020/06/06:サイト掲載 |