ハイビスカスの幕開け
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新首都東京 第五階層 ライジングゼロ社新東京支部 2045年5月17日 仏滅 会議室、珍しく朝から全員出席の会議が行われている。 「皆、端末の資料を見てくれ」 黒鎧課長の一声で皆端末の情報を確認し始める。 「これは先日回収された強化兵黄花伸から検出された素体パーツの一部だ。サイバネティックダークネスエレクトロニクス社製の素体であることが解析からも分かった。サイバネティックダークネスエレクトロニクス、通称CDE社は当時ベンチャー企業でありながら新首都東京の開発事業にいち早く参入した企業で、建物から兵器、サイバネ技術から端末に至るまで幅広く事業に参入しているという点では弊社と似ている。ただ決定的に違うのは世界に進出はしていないが新首都東京のシェア一位を誇る、国内企業としては非常にデカい企業だってことだ。俺たちはこんな奴らと相手しなきゃならない。奴らの本社は第六層リゾートエリアにあるが、そこまでには高速道路が多数存在する。相手が防衛するにはうってつけの場所だ。会社はCDE社に対して宣戦布告することを決定した。本日1300より決行する。各々引き締めてかかれ」 会議が終わった後、私達は二人で更衣室に向かう。 「……三波は死ぬのは怖い?」 アトラの問いに私は今まで考えていた事を話す。 「怖くない……っていうのは嘘かな。でも、私には皆を守るための力がある以上、私は戦いから避けられないと思う。私は兵器だから、その役割を全うしないと」 私の回答にアトラは悲しそうな顔をする。 「 アトラが私の顔を引き寄せ、アトラの顔が迫る。アトラが見たことないような顔をしている。唇と唇が重なり、頭が真っ白になる。えっ、今何をされているんだ?理解できない状況と、感情がないまぜになってぐちゃぐちゃになって……。苦しい気持ちと幸福感が混ざってずっとこうしていたくなるような……そんな感じ。 「なにこれ……私に何したの……?」 知識としても言葉としても聞いたことのない言葉だ。どうして幸せに感じるようなことを知らなかったんだろう。でも何だろう、アトラ以外とはしたくない。ずるいよアトラ。 「三波、 アトラの顔が真っ赤になる。そして目を逸らす。 「~~~ッ!!」 やっぱりこの状態のアトラは可愛い。 「わ、私は…… 私はアトラの顔を両手で私の正面に向かせる。 「……」 アトラは呆気にとられたような顔になる。 「ごめん、言い直すね。結婚しよう」 言ってて流石に恥ずかしいけど、でもアトラの不安を解消する方法なんて精神的に一緒になるしかないよね。誰かの不安心配をそのままにしたくはない。だったら解決法は一つしかない! 「えへへ、言っちゃった」 この距離で小声でもよく聞こえる。 「誰かに助けられたものは、誰かを助けたくなるんだって。誰かが言ってた。だから、私はアトラの言う通り、走り続けていたいんだ。警察課に入ったのだってそう、他人を助けることが私にとって幸せだったから。私が私であり続けるにはこうするしかないんだ。だからアトラの言うことは全部は叶えられない。だけどアトラの心の穴を埋めることくらいはできると思う」 頭が熱い、アトラの顔が歪んで見える。 「 私は構わず進める。 「私はアトラがもっと知りたいんだ。恋って熱くなって冷めるものってお母さんは言ってた。だからいつか終わりが来るかもしれない。変わらない人間はいないけど、でもそれでもアトラは私を好きでいて欲しい、私もアトラが好きでい続けたい。だから、私についてきてほしい、私は絶対に貴女を悲しませたりしない。これからも私の相棒でいて欲しい」 ようやくアトラの答えを聞けた。 「さぁ、まだ時間あるし、どこか食べに行こうよ! 前に食べたパフェ、また食べたいなぁ」 着替え終わった私は同じように着替え終わったアトラの手を引き扉を開ける。
お母さんが私のヒーローだったように、私も誰かのヒーローになれてるのかな。 「よくもまああんな恥ずかしいセリフ言えますね君の三波ちゃんは」 |
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2020/05/06 2020/06/08:サイト掲載 |