そこにあるイベリス
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国会議事堂 朱雀隊臨時待合室 1月18日12時00分 隊長が倒れてから三日が経ちました。未だ起きる気配がなく、私たち朱雀隊も作戦に参加することが出来ずにいました。 「イベリス、ティッシュ取って」 私達強化兵の上を行くものか……。 「話を戻すと、新人歓迎会で男三人を刑事告訴し、その後三人の娘を出産、カケル、ミツル、ミオと名付けられてるけど、うわぁ、これは見たことある顔だね」 横から写真を見ると、確かに覚えのある顔でした、どれも人型の顔そっくりです。 「で、初の人型暴走事件で最初に殺されたのがこの三人、それ以降兄弟は自ら強化兵の制式配備に志願して現在に至るっと」 そうしているともみあげを長くしたような髪型の中学生くらいの女性がとてとてとこの部屋に入ってきて書類を私に渡してきました。 「私に?」 こくりとうなずいてまたとてとてと部屋を出ていきました。 「イベリス、内容は?」
「無理無理無理無理!!」 私達は上空から発射される大型ビームを走りながら避ける羽目になりました。 「無理ではない、ライフルで電波塔の人型を攻撃すればすぐだ」 先ほどから私達と並走しながらワイバーンさんと会話しているのは 「っていうかオペレーターとかいないんですか!!」 私が質問すると、狼さんは答えます。 「オーナーは試作兵器試運転強化兵朱雀隊隊長フレスベルグの専属オペレーターだ、お前たちにはオペレーターは今のところ配備される予定はない、それにオーナーはフレスベルグの連日の出撃に合わせてサポートしていたためフレスベルグが起きるまで休暇を申し付けられた」 ワイバーンさんが吠えた所でビームの雨が止みます。 「作戦の概要をもう一回確認して良いかな?」 見ると反射板がこちらに向けて飛んでいました。 「長話しすぎたね、走るよ!」 物陰から出て、電波塔に向けて走ることになりました。直後甲高い音が鳴ったと思うと自分たちがいた場所にビームが降り注ぎます。 「コンタクト!」 壁を形成するように人型が布陣してきました。すると狼さんは建物を伝いながらレールガンを連射し陣形に穴を開けます。 「ワイバーンさん!」 この時の為とばかりにワイバーンさんはライキリを構えて横薙ぎしました。 「邪魔邪魔!」 私は事前に背負ってきたカノンをエンデュミオンで持ち、右の反射板に向かって打ちます。 「二枚破壊!」 私とワイバーンさんは左の建物に隠れビームをやり過ごします。狼さんはビルの上からレールガンで正確に反射板を破壊していきますが、数が減る様子が見えません。 「反射板のばらまきすぎだな、反応速度が遅い」 ワイバーンさんは両手で指をさしながら笑います。 「カッコいいってことだよ狼君」 電波塔の入り口が見えるところまで来たところで、戦車が道をふさいでいるのを確認します。上空にビームを撃っていて、これでビームの数を増やしているのでしょうか。 「戦車の数は四台だ、電波塔の進路を塞ぐように展開している」 二台の戦車がこちらに砲身を向け、反射板が空中に大量に展開される。カノンじゃ敵の数が多すぎる。 「先ほどの人型から奪った武器だ、受け取れ」 汎用散弾砲、スプレッダー! 「よし、じゃない!!」 戦車はその重量を生かして轢くために突進してきます。ワイバーンさんは飛び上がり、戦車が下を通るのに合わせてライキリを突き立て二分割します。ワイバーンさんの後ろ……私の目の前で戦車が一台爆発します。 「まず一台」 私はスプレッダーをエンデュミオンから落としカノンに持ち替えてもう一台の戦車の向けられた砲身に撃ち込みます。粒子が拡散した砲身は爆発し、二台目も破壊します。後ろにいた戦車が砲身を向けながら、私に向けて突進してきます。 「無茶するなぁ、これどうするの?」 「マジで登った……もう無理ー!」 八割を超えたところでワイバーンさんが音を上げました。 「敵の数が少ないな。この分だと展望台に敵が密集していることになるが」 私は姿勢を低くして扉を少し開け様子を見ようとしますが、沢山の銃撃に扉がさらされます。扉の風通しがよくなったところに持ってきた対人型用グレネードを投げ込みます。 「グレネード!」 慌てて処理しようとする人型の足音が聞こえたところで大きな雷の音が聞こえたと思うと大量の倒れる音が聞こえ、静かになります。私は展望台に入り、人型が動かないか一体ずつ確認します。 「クリア」 <<対人型用グレネード、通称ネメシスを使いましたね! 人型は電気が弱点なことに着目した兵器で大体一フロアの人型はこれで一発です! 使い方は……もう知ってましたね! 注意点としては支援機動兵器にも感電してしまう可能性があるので強化兵のみの運用が求められますがドアを避雷針代わりにするのは考えましたね! 私はこの兵器の素晴らしさを後世に伝えたいのですが、人型が一体もいなくなった世界にならないことには話が始まりませんね! もっと早くこれが生まれていれば三年も日本が戦場になることもなかっただろうと残念な気持ちでいっぱいです! なので私はこれからもどんどん兵器を作っていくのでご期待ください! 開発部でした!!>> 言うだけ言って通信が切られてしまいました。 「めっちゃ喋るね彼女」 メインデッキ二階への階段を見ると二階にいた人型がこちらに降りてくる音が聞こえる。私は人型の武器のライフルのロックを解除し構えます。 「コンタクト!」 あとは降りてくるのを撃っていくだけです。 「 トップデッキは機械がたくさん置かれていて、何より窓が全て取り外されていました。 「成程、トップデッキの窓を外して三百六十度全てを砲門としていたのか」 そう言って狼さんがエレベーターに乗って降りていきます。 「イベリス、エレベーターを待ってる間に私の推理を聞いてもらってもいい?」 驚いた、こんなに近くにいたなんて 「出産記録も養子記録もない謎の少女……ここからは憶測だけど、機密兵器が彼女だったとしたら? だとしたらさらに仮説が生まれる。彼女が人型だったとしたら、つまり人型を作っていたのはこの会社自身だったとしたら、これはとんでもないマッチポンプってならない? うーん、ありえそうだ」 ワイバーンさんは私に指をさす。 「アニメみたいじゃん?」 いつか どこか 私は目を覚ます。 「ここは……どこだ?」 この電車は……三波を連れて遊園地に行ったときの帰りの電車だ。 |
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2020/04/20 2020/05/03:誤字修正 2020/05/18:サイト掲載 |