そこにあるイベリス
最終話 そこにある初恋の思い出

旧首都東京 エリュシオン社前 1月23日16時30分


「……今まで聞きそびれていたことがあるんだけど」

 イベリスとの合流地点につこうとしている頃、ワイバーンが口を開いた。

「なんだ」
「なんで、兄弟は三波ちゃんを引き取ったんだい?」
「半分は、倫理観の問題だ」
「それはなんとなくわかるよ、新しい生命体を作ろうってことだからね、もう半分は?」
「もう半分は……ある男と裁判になって、勝訴したが自殺に追い込んでしまったという、負い目かな」
「関係ないじゃないか」
「関係ないかもな……でも、あの男が言った言葉が今でもこびりついて離れない。自分が蒔いた種だってのにな。その時言われた言葉が……プロジェクト凍結の時、三波の処分をどうするかとなった時に、三波があの男と同じことを言ったんだ、"捨てないでくれ"ってね。だから、私が引き取ることにした。彼女には好きにさせてきた。戸籍はあるが対人恐怖症だったし、そもそも開発部の人間以外と慣れるまで時間がかかった。最初は娘達とも口をきけないような子だったよ。放任主義が悪いのはわかってるが……三波にしてやれることなんてほとんどなかった。今となっては唯一残された希望だ」
「兄弟、君は本当に救われないね。復讐の先のことは考えているのかい?」

 私はクラインでのことを思い出す。

「約束、したからな。それが呪いであっても、私にとっては大事なことだ」

 今となっては、あのクラインの世界は三波が作った夢だったのだろう。
 三波は自分が必要とされない世界が欲しかったのか。

「もうすぐ終わる、イベリスとの合流ポイントだ」


 イベリスは白バイでやってきた。その身のこなしは妙に様になっている。

「イベリス、只今到着しました!」
「ああ、ご苦労だった」
「これで全員揃ったねぇ」
「ふむ」

 再開を喜ぶのもそこそこにエリュシオン社前に立つ。

「上だ」

 ウルフの声で全員が、上を見上げる。空飛ぶ鱏……閃光の鱏フラッシュレイだ。閃光の鱏フラッシュレイは私達を見つけたのか光学迷彩を起動しようとする。
 私はとっさに電柱をを引っこ抜き、閃光の鱏フラッシュレイに向けて投げる。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!」

 閃光の鱏フラッシュレイに電柱が刺さり、光学迷彩が解ける。

「よし、ワイバーンと私で閃光の鱏フラッシュレイを討伐する! 二人は先に社内に入って人型を倒して道を切り開いてくれ!」
「了解」「ウィルコ」

 私とワイバーンは跳躍し、そのまま飛行を開始する。

<<兄弟! 燃料気化弾頭だ!>>

 私は合流前に聞いたトーカティブのセールストークを思い出していた。

<<マサムネには隠された機能があります! こういうの、ワクワクしますよね! その機能はこちら! なんと遠隔兵器なのです! 装備している人の思考に合わせて自由自在に動く刀! えっ、なんで今まで隠してたのかって? だって今まで必要なかったじゃないですか! 秘密は秘密のままにしておくつもりでしたが、なりふり構っていられませんよね! だからお話ししました! 以上! トーカティブでした!>>

 刀身が鞘から勢いよく飛び出し、ミサイルが飛翔した場所へ向かっていく。ミサイルの着火装置を丁寧に切り払い、そして推進部も切り払う。爆薬が入った箱と化したミサイルが私に向かって高速で落ちてくる。それを手でつかみ、閃光の鱏フラッシュレイの真上に向けて投げる。その後、ワイバーンと共に閃光の鱏(フラッシュレイ)の真下に移動し、爆発を免れる。衝撃波が上で発生し、閃光の鱏フラッシュレイはその衝撃で、若干降下する。そんな私達に向けて大量のミサイルを発射してくる。

<<ワイバーン!>>
<<了解了解>>

 ワイバーンはスプライトを並走させ、ビル群を縫いながらついてくるミサイルをスプライトのレーザーで迎撃する。
 私は急降下し、ギリギリまで引き付けて急旋回して地面に叩きつけることで対処する。

<<尾にレールガンが搭載されてる!>>

 そう言われ振り返ると光が見えていた私はビルの影に隠れ閃光の鱏フラッシュレイの視界から消える。しかし、自分より上の部分が撃ち抜かれ、ビルが倒壊する。私は瓦礫を避けつつも、避けきれなかった瓦礫を斬機刀で切り払い、閃光の鱏フラッシュレイの上にあがって様子を見る。
 レールガンが飛んでくるがビルを足蹴にして高速移動し避ける。

<<どうする兄弟、私の武器じゃ防戦一方だ!>>
<<なんとかして近づけられればな……>>
<<フレスベルグ、困っているのか>>
<<ウルフ、何か策があるのか>>
<<ああ、私のレールガンで奴のミサイル発射口を狙い誘爆を誘う、発射タイミングはそちらで指示してくれ>>
<<よし、燃料気化弾頭を誘う>>

 私は思いっきり上空に飛び、燃料気化弾頭を誘う。もはやあいつにはミサイルで狙っても無意味な事はわかっている筈だ。なら、秘蔵の兵器を使うしかない!
 ミサイル発射口が開く、そしてミサイルが発射されようとする。

<<今だ!!>>
<<了解>>

 ミサイルが飛び出した瞬間とほぼ同時にレールガンがガラスを破り、空を突き抜け閃光の鱏フラッシュレイの上を掠め、そして燃料気化弾頭を直撃する。
 大爆発を起こした弾頭は中のミサイルに誘爆し、そして燃料にも引火したのか内部で大爆発を起こす。その巨体を支えられなくなった閃光の鱏フラッシュレイは徐々に墜落していく。

<<やるね犬っころ!>>
<<狼だ>>


 一人の拍手がエリュシオン社の屋上から聞こえる。
 わざわざ通信を開いてやっている、完全に挑発だ。

<<誰だ!>>
<<中々やるじゃないですか、朱雀隊の皆さん>>

 屋上から現れたのは母なるものガイアと三波だった。

「三波ッ!!」

 私はエリュシオン社屋上に飛び、ヘリポートに着地する。

「あっ、ちょっと! はぁ、もううんざりなんだけどな」

 ワイバーンも遅れて、エリュシオン社ビルの屋上に立つ。

「流石ですよ、朱雀山円香。貴方がいなければ、もっと早く戦争が終わっていたのに」

 男とも女とも言えない顔つき、体格、そして声。間違いない、母なるもの(ガイア)だ。

「三波、三波! 私だよ、お母さんだよ!! お願い返事して!」

 私は必死に三波に呼びかける。

「三波……?」

 しかし、三波の目は虚ろで、焦点も定まっていない。

「さぁ、三波君、彼らを止めなさい」

 三波は手を上げる。

「停止」

 そういった瞬間、集まっていた朱雀隊の全てが倒れ崩れる。

「―――――――――――――ッ!!!」
「身体機能停止、作戦続行不可能」
「ありゃあ、やられた、こりゃ無理だ」
「なんなんですか!? いったい何が……!」

 母なるものガイアが私に近づいてくる。

「ハハハッ!このクソ娘、役に立つじゃないですか! 流石だよ、朱雀山の最高傑作!!」
「貴様……!!」

 母なるものガイアは丸腰だというのに、身体が動かない。

「驚くのはまだまだこれからですよ」

 母なるものガイアは手も足も動かさず私の手からマサムネと斬機刀を放し、空中に飛ばして自分の下に飛ばす。
 そして、左手でマサムネの刀身を、右手で斬機刀の刀身を握り、そのまま握りつぶす。

「こんななまくらで戦っていたとは、我々も舐められたものです」

 ワイバーンのスプライトは奪われ、ウルフの機銃とレールガンは弾が無くなるまで虚空を撃たされ、イベリスのエンデュミオンが持ってきていた武器は一つ一つ破壊される。

「借り物の力で粋がるんじゃない!!」
「なに?」
「貴様は玩具で遊んでいるだけのガキだ! 何がAI暴走だ! 何が人型量産だ! お前は他人のやってきた事を横から掠め取って自分の手柄にしたいだけのクソ野郎だ!」
「動けない分際で……いいでしょう、冥土の土産に僕の存在理由を教えましょう」
「存在理由!?」
「僕には、人類も自分が顎で使ってきた兵器達にも興味はない。僕が存在する理由、それは真なる支配者として君臨することだ!!」
「世界、国家、戦争、経済、思想、文化法律倫理生死未来過去現在存在理由に至るまで!!! 僕が全てを支配してあげようと言っているんだ!」
「朱雀山三波にはそれができる、そして僕はそれを意のままに操れる。その為に朱雀山円香、お前の兵器暴走ウイルスを応用させてもらいましたよ」
「この僕が、くだらない人類社会を破壊して、真の生態系の頂点に君臨してやりますよ」

 私を蹴る、蹴る、とにかく蹴る。そして踏みつけ、言う。

「それが僕の……理想だ!」
「下らん理想だ!!」
「なにィ……?」
「己が存在理由、それは己が決めることだ! 他の誰が決めることじゃない、己自身が! お前が決めることじゃない!!」

 そうだ、黒鷲だって本を読んだとは言え、最終的に自分の存在理由は自分で決めた。こいつは そういう思いすら踏みにじろうとしているのだ。

「分からんでしょうねえ、僕の存在理由など。私は全世界のネットにつないだ、そして人間の尊さと愚かさを知った! 僕は考えたこの人類は価値あるものだけ考えていればいいと! 価値あるものだけを選別するそして僕が中央制御コンピュータとして永遠にこの世を管理し続ける! この世には改革が必要なんですよ!」

 よくわかった。

「ああ、これで一つはっきりした……お前がどうしようもないクズだってことが!! ネットで真実を知った気になった引きこもりがいい気になるな! 自分が人柱になるだと……ふざけるな! 自己犠牲ぶって被害者気取りもいい加減にしろ! 所詮お前は自分一人じゃ改革も起こせなかった無能だ、それだけは確かなんだよ!」
「うるさい! クズが説教するな……お前は楽に殺さない、娘の目の前で、惨たらしく死ね!」

 私の首を掴んで振り回す、そして私を投げ飛ばし世界は反転する。時間稼ぎは終わりだ、救世主の名を叫ぶ。

「トーカティブ!!!!!」
<<人使いの荒い人ですね、終わりましたよ>>

 私は受け身を取って着地し、立ち上がる。

「なんだと!? 僕の作戦は完璧だったはずなのに!」
「完璧? 私が何も対策を講じずにお前に突っ込んできたと思ったのか?」
「三波が攫われた時点で三波の能力を使われることは織り込み済みだ、そして私は三波に十五年何もさせなかったわけでもしなかったわけでもない!! 三波の能力は作った私達がよく知ってるんだよ!」

 実際に罠にかからなかったら除去もできなかったのは娘の前ではかっこ悪い所だが。さて、武器が……エンデュミオンしかない。しかしエンデュミオンはイベリスの体格に合わせてある、私には大きすぎる。

「フレスベルグ」

 私は振り返り思い出す。
 黒鷲の槍があった。

「ウルフ!」
「フレスベルグ、黒鷲の最期の通信を聞いてほしい」

<<見事なり朱雀山円香、私と死合ってくれたこと、生涯の誇りだ。母なるものガイアの理想も聞こえは良かったが、お前の剣には迷いがなかった。あの太刀筋は守る者があるからこその強さだ。私には守る者などなかった。それが羨ましかった。この槍のロックにはタイムリミットが付けてある。お前の存在理由の為に、この槍を使ってくれ>>

「ふん、兵器の分際で粋な真似をする。それで野良犬ソトゥレイドッグ、槍を持てばこの女が勝てると?」
「ああ、私はやりたいと願った、だからやっているに過ぎない。何が正しいかは正しいと思う心が作るものだ。お前は支配だけが原動力だった、フレスベルグは復讐だけが原動力だった。お互いに似ているかもしれない。だが、勝つのは常に私達だ!! 受け取れ!」

 ウルフが尻尾で槍を掴み、投げる。
 母なるものガイアがそれを遮ろうとするが、跳躍し私が先に受け取る。

「ハハッ、クール」
「指をさすな」
「アハハ……」

 そうだ、いつの日だって暴力は暴力でしか解決できないかもしれない。
 どうせ最後にはこうなるに決まっている。こうするしかないんだ。

母なるものガイア……ようやくお前をこの手で殺す時が来た。私が今日まで生きてきたのはお前をこの手で殺すためだ……私は明日を掴むために、お前を……バラバラにしてやるッ!」

 私は槍を黒鷲のように構え、瞳を閉じ、そして開く。

「いざ……参る!」


<<こちらオーナー! 聞け電光一閃ライトニングスラッシュ! 敵の解析が完了した、奴が三波ちゃんの生殺与奪を握っている! 全身生体装甲ナノスキンに守られ強化兵のようにバリアを持つ。唯一の弱点は心臓だ。装甲を破壊して心臓を貫け。今そこで彼を討てるのはキミだけだ。フレスベルグ、幸運を祈る!>>


 母なるものガイアはカノンを空中に並べ私に向けて乱射してくる。私は弾道を正確に計算し致命弾だけ避けるがそこに母なるものガイアが突進してきて手で地面を思いっきり叩き付けアスファルトを隆起させてくる。
 私は即座に横にステップし槍で払うが、母なるものガイアに薄く張られたバリアがそれを弾く。
 母なるものガイアは態勢を整え、弾がなくなったカノンを一か所に集めて、手を払いそれに連動したカノンを私に振り回してくる。即座に槍で叩き切り使い物にならなくする。
 母なるものガイアは思いっきり咆哮したかと思うと、閃光の鱏フラッシュレイの残骸をビルの屋上まで飛ばしてくる。

「さぁどうする! 死神アズライール!!」

 私に向けて飛ばし、押しつぶす気か。私は突く構えを取り残骸を迎え撃つ。
 そして、突く。その瞬間残骸は音を立ててバラバラになり、ビルから落ちていく。

「フレスベルグ、その技は」

 流石機動兵器、見えていたか。

「見よう見まねでもできるものだな、三回しか突けなかったが」

 私は槍を上空に投げ、母なるものガイアに向かって跳躍し槍をもってそのまま母なるものガイアに向かって降下する。母なるものガイアは避けきれず防御態勢を取るが防ぎきれずによろける。着地し心臓を狙うもワイバーンのライキリが飛んできて道を阻まれる。
 ライキリが飛んで行ったあと母なるものガイアはこちらに向かって両手を掴みかかるポーズを取り突撃してくるが槍で防御する。だが力で押し負け槍が弾かれ後ろに飛んで地面に刺さる。
 拾いに向かおうとすると母なるものガイアが突進してきて殴り掛かってくる。腕で弾き、腹に向かって蹴りを加える。
 もう一度母なるものガイアが殴り掛かってくるが、私も殴り掛かりお互いの顔に当たる。だが奴より私の方が上だった。そのまま殴り飛ばす。
 ライキリが再度飛んできて私を掠めていくが私はライキリの持ち手を取り無理やり制御から離す。そして起き上がった母なるものガイアに向けて思いっきり切りかかる。バリアが砕け、生体装甲ナノスキンに傷がつく。

「痛いじゃないか!!」

 そう言うと私の手からライキリが離れ、何処かへ飛んでいく。

「お前に利用されるなら武器なんていらなかったんだ! この身体で十分だ!」

 私を叩き伏せ、そして首を掴んで持ち上げる。必死に抵抗し、足で首を蹴り、手の力がなくなったことで解放される。そして後ろにあった槍を取り、構えなおす。

 母なるものガイアが左手で殴りかかってきたところを槍の柄で突いて怯ませる。

 母なるものガイアが右手で殴り掛かってきたところを槍の刃で切り生体装甲ナノスキンを破壊する。

 打つ手なしになったのか、両手で取っ組みかかろうとしてくるが、槍のリーチ差を測らなかった時点で負けが決まったようなものだ。私は腹に刺し装甲ごと貫通させる。跳躍し、槍の柄に向かって蹴りを放つ。槍が完全に母なるものガイアの身体を貫通し後ろへ飛んでいく。母なるものガイアも吹き飛ばされ、傍にあった槍を取ろうとするが、私はスライディングして槍を取る。
 母なるものガイアは立ち上がり、よろよろの身体で突進してくる。

 私は心臓だけを見据え装甲ごと一突き……いや、三度突いた。

 一度目は生体装甲ナノスキンを破壊し、二度目は体を破壊し、三度目は心臓を破壊した。

「ウグッ!……馬鹿な……」
「これで終わりだ」

 そうだ、私の戦争は終わった。


 三波がしっかりと立ち上がる。
 朱雀隊も母なるものガイアが機能停止したことで立ち上がり始める。

「お母さん……?」

 私は顔を殴られたことで血を吐いていた。逆に言えばそれくらいだ。

「お母さん! 助けに来てくれたんだ!」

 私は拳銃を取り出す。

「お母さん……!?」
「三波は無自覚にも暴走した。またいつこんなことが起こるかわからない。」

 そして三波に向けて構える。

「隊長!?」
「ミナミ……壊れちゃったんだね、皆にひどいことをして、兵器を暴走させて」

 三波は母なるものガイアに操られていた時も自分が何をしているかわかっていたのだ。私は拳銃を捨て言う。

「三波……どこか遠くへ行こう、誰も傷つけない、誰もいない場所で」

 そうすれば、三波が操られることもない。

「いやっ! お母さんが一緒がいい、お母さんが一緒じゃないと嫌なの! どうしてお母さんは戦い続けるのお母さんには戦ってほしくなかったのに! ミナミが、ミナミが出来たことじゃない!」

 三波は捨てた拳銃を拾い、自分の懐からも護身用に持たせた拳銃を取る。
 そして、私と三波の頭に向ける。

「ミナミが世界に迷惑かけるなら、ミナミはもういなくていい!」

 そういって三波は目をつぶって撃とうとする。

 カチッ。

 私の拳銃には弾は入っていない。そしてミナミに持たせた拳銃にも弾は入れていない。

「なんで、なんで……!」

 ミナミは泣き崩れる。

「三波……私は貴方には三人の分まで生きてほしいの。私には、貴方に好きにさせることしかできない。でも! いつか……絶対に……貴方のことを好きになってくれる人が来るから、それまで生きていてほしいの。希望を捨てずに」

 三波は私の希望だった、なら、三波にもきっと自分の希望と思える人物が現れるはずだ。

「うん……わかった……待ってるから」
「ああ、帰ろうか、私達の家に。帰りを待ってるやつがいる」


 こうして、人型戦争は幕を閉じた。
 人型の詳細も、誰が戦ったのかも、そして誰が原因だったのかも。
 全てが政府によって秘匿された。
 勇者達は、三年間の間だけ戦場に存在した。
 記録には、"フレスベルグ""死神""電光一閃""イベリス""ワイバーン""ウルフ"と呼ばれた一小隊がいたことまではわかっていたが、その詳細は不明。
 2040年1月23日をもって彼らの行方は途絶える。
 日本国首相はこの戦争の全報告を十五年後に公開することを臨時国会で採決した。


 朱雀山円香は再び戦場に立つことはなかった。
 東京は長い時間をかけ再び英雄を必要としない日常へと戻っていった。
 それが、答えなのかもしれない。



















「ただいま、今帰ったよ」


            そこにあるイベリス 完。

2020/04/25
2020/05/22:誤字修正
2020/05/27:サイト掲載


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